編集後記

  

 ロカルノ映画祭グランプリ受賞で話題の映画『旅と日々』を観に行った。創作に行き詰った脚本家が旅先で出会う何げなくユーモラスな、けれど深い印象を残すいくつかの出来事を描いた物語。

  冒頭では、主人公が脚本を手がけた作品が映画内映画として映し出される。夏の海辺をさまよう謎めいた少女。多くのする河合優実の演技を初めて観た私にも「なるほど、こういうことか」と共感できた。原作つげ義春のもつテイストが鮮やかにアップデートされていた。 

 けれど私が心を動かされたのはその演技よりも、偶然ネットで見たインタビューでの彼女の発言だった。 ――俳優として目指している姿は? わたしが演じることで、世の中がほんの少しでもよくなること。 ――今いちばん興味のあることは? 

 ガザ。

  何かを作って見せるということ、人の目に自分の表現をさらすとはどういうことか。表向き作品にはあらわれないこの世界の現実は自分の表現にとってどんな意味をもつのか。今回の作品たちにも四者四様の「世界への視線」を読み取ることができた。 (YT)